雨中訪阿蘇草千里作

一群白馬鬃毛重
萬頃青原霖雨霏
偏請狂風無奪傘
客中何処燥征衣

2009年10月作

押韻

霏・衣:上平声五微韻。対句のため起句は踏み落とし

訓読

雨中 阿蘇草千里を訪ねて作る

一群の白馬 鬃毛 重く
萬頃の青原 霖雨 霏たり
偏へに狂風に請ふ 傘を奪ふこと無かれ
客中 何れの処か 征衣を燥(かは)かさん

鬃毛:馬のたてがみ
萬頃:頃は広さの単位で1頃が約580アールほど。萬頃ではるかに広いさまをあらわす
霖雨:ながあめ
:雨や雪がはらはらと降りしきるさま
:ことさらに。原義はかたよって,の意だが,そこから,ある状況・場面に局限して,というニュアンスを示す。したがって,ここでは,今だけはことさらに,くらいの意味
狂風:狂ったように吹きすさぶ風
:かわかす

雨の中、阿蘇の草千里を訪ねて作った

一群の白馬のたてがみも濡れて重たげに垂れ
遙かにひろがる青い草原には長雨が降りしきっている
今だけはことさらに狂風に請い願う,私の傘を奪ってくれるな
こんな旅先でびしょぬれになったら,いったいどこで旅ごろもを乾かせばいいのだ

補足

中津城をあとにして,列車で一気に阿蘇へ。あいにくの天気で,阿蘇駅のバス停にある掲示板の情報によれば山頂のロープウェーは運行中止,との情報でしたが,旅行の日程上,翌日にするわけにもいかないので,草千里までだけでも行こうと思い,阿蘇山行きのバスに乗り込みました。乗客は私と外国人カップルのみ。自然と運転手さんと会話することになり,「ロープウェーが運行中止になっているようなので,草千里だけ見て帰ってこようと思っている」と話したところ,運転手さんは「ロープウェーは運行しているはず。確認してみよう」といって携帯電話で運行状況を調べてくれ,「間違いなく運行している」と教えてくれました。ロープウェーが運行していることがわかったので,草千里で下車せず,山頂まで行くことにしたのですが,もともと草千里ではバスは数分間停車することになっているので,写真を撮ることができました。冒頭の写真は奇跡的にきれいに撮れていますが,傘の骨組みが反転してしまうほどの強風で写真を撮るのも大変でした。天気がよければ馬に乗る人もたくさんいたのでしょうが,さすがに天気が悪すぎました。馬たちもただ雨に濡れるばかりです。天気がよかったらなあと,いまだに悔しい思いが消えません。