麑城即目

薩州九月夏猶酣
麑島城中皆薄衫
處處拂灰灰未盡
人崇櫻嶽不知讒

2009年10月作

押韻

酣・衫・讒:下平声十五咸韻.起句の酣は十三覃韻からの借韻

訓読

麑城即目

薩州 九月 夏 猶ほ酣(たけなは)にして
麑島城中 皆 薄衫なり
処処 灰を払ひて 灰 未だ尽きざるも
人は桜岳を崇めて讒(そし)ることを知らず

麑城:鹿児島の街
即目:目に触れたものを詠んだ詩
九月:陰暦九月。太陽暦でだいたい十月
麑島:鹿児島
薄衫:薄着。衫はころも、ひとえ、肌着。
櫻嶽:桜島

鹿児島で目に触れたものを詠む

薩摩の十月はまだまだ夏の盛りのようで
鹿児島の街中ではみな薄着
あちこちで火山灰を払っていて灰はなくなりそうにもない
それでも人々は桜島に尊崇の念を持っていて悪く言うことなどはないのだ

補足

阿蘇観光の翌朝、電車で一気になんかして鹿児島に入りました。
「麑」という漢字は子鹿をあらわす字ですが、「鹿児」をあわせて出来上がっているので、日本の漢詩でしばしば「鹿児島」をあらわすのに用いられます。