時事偶感【2024.10】
時事偶感
井蛙語海鷃嘲鵬
狐鼠跳梁鷸蚌爭
今日廟堂如囿苑
奇禽怪獣競喧聲
2024年10月
押韻
下平声八庚韻:鵬(蒸韻から借韻)・爭・聲
訓読
時事偶感
井蛙 海を語り 鷃 鵬を嘲る
狐鼠は跳梁し 鷸蚌は争ふ
今日 廟堂は囿苑の如く
奇禽 怪獣 喧声を競ふ
注
井蛙:井の中の蛙。 《荘子・秋水》「井蛙不可以語於海者、拘於虛也」
鷃嘲鵬:鷃は斥鷃(ミソサザイ)、鵬は大鵬。大鵬が九万里も飛ぶのを小鳥のミソサザイが笑ったという寓話から、己の分を知らず妄りに人を笑うことを「斥鷃の笑い」と言う。また「鷃鵬」は大小の差が大きすぎることの喩。 《荘子・逍遙遊》「有鳥焉、其名曰鵬、背若太山、翼若埀天之雲、搏扶搖羊角而上者九萬里、絶雲氣、負靑天、然後圖南、且適南冥也。斥鷃笑之曰、彼且奚適也、我騰躍而上、不過數仞而下、翺翔蓬蒿之閒、此亦飛之至也、而彼且奚適也。此小大之辨也」
狐鼠:キツネとネズミ。コソ泥、小悪党の喩。
鷸蚌:シギとドブガイ。両者相い争って譲らないうちに、もろとも漁師に捕まったという(漁夫の利)。 《戰國策・燕策》「蚌方出曝、而鷸啄其肉、蚌合而箝其喙。鷸曰、今日不雨、明日不雨、卽有死蚌。蚌亦謂鷸曰、今日不出、明日不出、卽有死鷸。兩者不肯相舍、漁者得幷擒之」
廟堂:宗廟(祖先の霊をまつる廟)と明堂(政治を行う堂)、転じて朝廷、政治を行う場を意味する。
囿苑:鳥獣を飼育する園。動物園。
奇禽怪獣:互文。奇怪なる禽獣。
訳
時事についてふと感じること
井の中の蛙が知りもしない海のことを語り、ミソサザイが大鵬を馬鹿にして笑う
キツネとネズミが跳梁跋扈し、シギとドブガイは漁夫に利をさらわれることも知らず争い合う
今日、政界はまるで動物園のごとく
かくも奇怪な禽獣がやかましく声の大きさを競っている
補足
それぞれの禽獣が具体的に何(誰)を指しているのか、作者なりの想定はありますが、それをいちいち説明するのは無粋ですので、読む方が自由に想像していただくのが良いと思います。
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