醉歸

星近醉眸天地澄
玲瓏月影冷於冰
豈嘆陋屋無人待
好獨繙書親一燈

2008年12月

押韻

澄・冰・燈:下平声十蒸韻

訓読

酔ひて帰る

星 酔眸に近く 天地澄み
玲瓏たる月影 冰より冷ややかなり
豈に嘆かん 陋屋に人の待つ無きを
好し 独り書を繙き 一燈に親しまん

醉眸:酔ったひとみ
玲瓏:玉(ぎょく)のようにツルツルキラキラして美しいさまをいう.子音が同じ発音の字を重ねた双声語
陋屋:せまくるしい粗末な家.自宅のことを謙遜していう際に用いることが多い.
:軽い肯定や決意を表す

酔って帰る

星は酔った眸に間近に見え,天地は澄み渡り,
きよらかな月の光は冰よりも冷ややか.
家に待つ人がいないことをどうして嘆いたりしようか.
さあ,帰ったら,ひとり誰にも邪魔されず本を開いて灯火に親しむこととしよう.

補足

11月の終わりだったか,12月の初めだったか,日曜日に本社で研修があり,研修が終わったあとにかなりの人数で飲みに行きました.なんとか終電で帰って来れたのですが,一駅乗り過ごしてしまい,そこから家まで歩いて帰るはめになってしまいました.夜空を仰ぐと,オリオン座が頭上にとても大きく見え,手が届きそうなほどに近く感じました.後日,このときの感覚を思い出しながら作ったのがこの詩です.