自熱海至初島船中作 其三

風乱鬢毛潮濕衣
汽船進處浪花飛
初望一島如毫髪
頃刻已看鷗點磯

2008年11月

押韻

衣・飛・磯:上平声五微韻

訓読

熱海より初島に至る船中の作 其の三

風は鬢毛を乱し 潮は衣を湿す
汽船 進む処 浪花飛ぶ
初め望む 一島の毫髪の如きを
頃刻にして已に看る 鷗の磯に点ずるを

鬢毛:耳ぎわの毛
浪花:波しぶき
毫髪:ごく細い毛
頃刻:しばらくの時間
:現代中国語では第4声だが,漢詩では平仄両用とされている

熱海から初島までの船の中の作 その三

風は鬢の毛を乱し,潮は衣服をしめらせる
汽船が進むと,そこに波しぶきが飛ぶ
最初は細い毛のように小さい島しか見えなかったが
しばらくすると,もう,カモメが磯に点々ととまっているのが見えるほど近づいた

補足

熱海港から初島までは約25分ですが,船旅が新鮮だったこともあり,あっという間に感じました.カモメは熱海港にも初島にもいて,船が出るとそれにずっとついて来ます.おそらく船といっしょに熱海-初島間を往来しているのでしょう.彼らが船についてくるのは乗客から餌をもらえるからです.乗客が餌(パンみたいなものに見えました)を空中に放り投げると,カモメは絶妙の技でそれをくわえ去っていきます.何羽ものカモメが先を争ってこの妙技を披露してくれるので,船上で飽きることはありません.