浴夕陽浦溫泉

一山丹葉有濃淡
四面靑天無異同
欲以乾坤爲棟宇
湯池爲襖暖痩躬

2008年12月

押韻

同・躬:上平声一東韻.対句のため起句は踏み落とし

訓読

夕陽が浦温泉に浴す

一山の丹葉 濃淡有り
四面の青天 異同無し
乾坤を以て棟宇と為し
湯池は襖と為し痩躬を暖めん

夕陽浦溫泉:夕日ヶ浦温泉
丹葉:紅葉に同じ
以乾坤爲棟宇:乾坤は天地のこと.《世説新語》任誕第二十三にいわく,「劉伶,嘗に酒を縦にし放達なり.或は衣を脱ぎ裸形にして屋中に在り.人見て之を譏る.伶曰く,我は天地を以て棟宇と爲し,屋室を褌衣と爲す.諸君,何爲れぞ我が褌中に入る,と.(訳:劉伶はいつも酒を飲み放題でふるまいが奔放だった.服を脱いで裸で家の中にいるときもあり,人はこの様子をみて非難した.ところが劉伶は「私は天地を自分の家とし,部屋をふんどしにしているんだ.君たちはどうして僕のふんどしの中に入ってくるんだよ」と言い放った.)」 劉伶(221?~300?)は竹林の七賢の一人.
:上着

夕日が浦温泉に入る

山をおおう紅葉には濃淡があり
頭上に広がる空は四方のどこを見ても同じように青い
いにしえの劉怜のように,天地をわが家となし
温泉を上着としてこの痩せた身を暖めることとしよう

補足

夕日ヶ浦温泉は丹後にある温泉郷です.丹後旅行でカニをいただいた旅館に露天風呂があり,そこに入ることができました.劉怜の故事を使って露天風呂の開放感をよみこんでみました.しかし,あらためて思ったんですが,竹林の七賢はホントにファンキーですな.