登大室山望富嶽 其三

相対蓮峰姿色鮮
左望赤石右金川
廻頭瀛海無船影
知得地圓於九天

2008年11月

押韻

鮮・川・天:下平声一先韻

訓読

大室山に登り富嶽を望む 其の三

蓮峰に相ひ対すれば姿色鮮やかなり
左に赤石を望み 右に金川
頭を廻らせば瀛海に船影無く
知り得たり 地は九天より圓きを

蓮峰:富士山のことをいう
赤石:赤石山脈。南アルプス
金川:かながわ。神奈川の古名
瀛海:大海
九天:大空のこと
結句:古典中国の世界観では「天圓地方」、つまり天はまるく地は四角、ということになっている

大室山に登って富士山を望む

富士山と向かい合うと,その姿は鮮やかで
左には赤石山脈を,右には神奈川を望むことができる
後ろを振り返ってみると,果てしなく広がる海に船の影もなく
地が天よりもまるいということを知ることができた

補足

大室山頂からは富士山だけでなく、相模湾と房総半島、南アルプス、そして太平洋まで見渡すことができます。ただ、結句は、自分でもあまり自信のない表現です。言わんとすることが古典中国語としてきちんと通じるものかどうか、ちょっと不安です。
なお、承句2字目の「望」は現代中国語では第4声ですが、漢詩の世界では「平仄両用」となっており、平声としても仄声としても使えることになっています。ここでは平声として使っています。