浴伊豆溫泉【2008.11】(伊豆の温泉に浴す)
浴伊豆溫泉
獨浴湯池仰碧穹
濕烟沾鬢熱浸躬
鮮紅瞥瞥非花笑
知是溫漣搖落楓
2008年11月
押韻
穹・躬・楓:上平声一東韻
訓読
伊豆の温泉に浴す
独り湯池に浴して碧穹を仰げば
湿烟 鬢を沾し 熱 躬に浸む
鮮紅 瞥瞥たるは 花笑ふに非ず
知る是れ 温漣 落楓を搖らすなるを
注
湯池:温泉
濕烟:湯けむり
鬢:耳ぎわの髪の毛
躬:からだ
瞥瞥:ちらっと見えるさま
笑:花が咲く
訳
伊豆の温泉につかる
ひとり温泉につかって青空を仰ぐと
湯けむりは鬢の毛をうるおし,湯の熱が体に沁み入る
鮮やかな赤色がチラチラ見えるのは花が咲いているわけではなく
温かなさざなみがカエデの落ち葉を揺らしているのだった
補足
伊豆ではいろんなところに「立ち寄り温泉」なるものがあり,タオルもバスタオルも貸してくれるので,手ぶらで立ち寄って温泉に入ることができます(無論,お金は要ります).この詩も,伊豆高原駅の近くの立ち寄り湯で,露天風呂に入ったときのことを詠んだものです.「溫漣」という語はおそらく用例がないと思いますが,温泉の中に起こるさざなみを「温かい漣」と表現してみました.無理のある表現ではないと思うので何とか通じるんじゃないかと思うのですが.
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