中秋書懷

今人擧世逐時流
偸利釣名毫不羞
澆季只存明月美
獨承雅道弄中秋

2024年9月

押韻

下平声十一尤韻:流・羞・秋

訓読

中秋書懐

今人 世を挙げて 時流を逐ひ
利を偸み 名を釣りて 毫も羞ぢず
澆季 只だ存す 明月の美
独り雅道を承ぎて 中秋を弄せん

逐時流:時代の流行を追いかける。 李咸用《同友人秋日登庾樓》「臂刀腰劍逐時流」
偸利:正義によらずに利益を得る。 《淮南子・泰族訓》「偸利不可以爲行」
釣名:たくみ偽って名誉を得ようとする。虚名を博する。 韓偓《招隱》「時人未會嚴陵志 不釣鱸魚只釣名」
澆季:道徳風俗の軽薄な末世。
雅道:風雅の道。 王昌齡《靜法師東齋》「琴書全雅道 視聽已無生」

中秋節に感懐をしるす

今の世の人々はこぞって時流を追いかけ
不義の利益を貪り虚名を追い求めて少しも恥じることがない
こんなひどい末世でもただ明月の美しさだけは変わらずある
自分ひとりだけでも風雅の道を受け継いで中秋の夜をめで楽しむこととしよう

補足