早春山徑

徑深人語絶
淸昊碧如磨
梅老花逾麗
春来風却多
暗香浮復散
黄鳥息還歌
時有一村叟
荷鋤仰日過

2009年3月

押韻

磨・多・歌・過:下平声五歌韻

訓読

早春山徑

徑深くして 人語絶え
淸昊 碧きこと磨くが如し
梅老いて 花 逾 麗しく
春来たりて 風 却って多し
暗香 浮かんで復た散じ
黄鳥 息ひて還た歌ふ
時に 一村叟の
鋤を荷ひ日を仰ぎて過ぐる有り

淸昊:昊はそら.特に春や夏のそら.
:いよいよ.ますます
:いこう.休む
黄鳥:うぐいす
村叟:村のおやじ

早春の山の小道

こみちは山深くに入り,人の声は絶え
清らかな空の青さはまるで磨かれたよう
梅の木は老いても,その花はますます美しいが
春が来て,かえって風が多い
梅のほのかな香りは漂っては風に吹かれて消え
ウグイスは一休みしてはまた歌う
そのとき,ひとりの村のおやじがやってきて
鋤をかつぎ,太陽を仰ぎみながら通りすぎていった

補足

作詩を再開してから初めての律詩です.
梅林のメインコースをはずれて山の中へ入っていく細い道を行くと,観光客はおらず,静かな雰囲気で梅を見ることができます.梅林というのは実際は梅を栽培している果樹林なので,梅まつりであろうと農家のひとは仕事をしています.