潮岬偶詠 其三

滿目海光靑一齊
天開地盡蝶兒迷
浪声毎砕斷蝉語
石熱新詩不得題

2009年7月

押韻

齊・迷・題:上平声八斉韻

訓読

潮岬偶詠 其の三

満目の海光 青 一に斉しく
天開け 地尽きて 蝶児 迷ふ
浪声 砕くるごとに 蝉語を断ち
石 熱くして 新詩 題するを得ず

滿目:見渡す限りの
一齊:ひっくるめてすべて同じ
:詩や文をかきつける

潮岬でたまたま詠んだ

見渡す限りの海の光,その青さはどこまでも変わらない
大空はひろびろと広がり,陸地はここで尽き,蝶はゆきまどう
波の音が砕けるように大きく響き渡るたびに,蝉の声がかき消されて途絶え
石は焼けるように熱くなっているので,新しくできた詩をかきつけることはできない

補足

日本でも中国でも昔の文人は,作った詩文を建物の壁やら柱やら,名所の石やらに書きつけたものです.そのため「払石題(石を払ひて題す)」とか「橋柱題(橋柱に題す)」とかいう言葉が詩には出てくるのですが,しかし,現代の観光地で同じことをしたら,ただの落書きになってしまいます.ですから,よいこのみなさんは石が熱かろうと冷たかろうと,詩を書きつけるようなことはしてはいけません.