待船于海津遇急雨

糸雨爲珠將倒海
四方濛漠只看雷
須臾雲去一望霽
島色分明飛艇来

2009年7月

押韻

雷・来:上平声十灰韻.起句は踏み落とし

訓読

船を海津に待ちて急雨に遇ふ

糸雨 珠と為り 将に海を倒さんとし
四方 濛漠として 只だ雷を看る
須臾にして 雲去り 一望霽(は)るれば
島色 分明にして 飛艇 来たる

海津:海の渡し
糸雨:糸のような細かい雨
倒海:海を傾ける.大雨の比喩として一般的に使うが,ここでは目の前の海をひっくり返すほどに,というニュアンスも含む
濛漠:暗く,ぼんやりしている
須臾:しばらくして
:はれる
分明:くっきり,はっきり

渡し場で船を待ってにわか雨にあう

糸のような細かい雨が珠のような大きな雨粒となり,海をひっくり返しそうなほどの大雨となり
四方は暗く,ぼんやりして雷の光以外はなにも見えない
しばらくして,雨雲が去り,見渡す限り晴れ渡ると
島のすがたもくっきり見え,待っていた船が飛ぶような勢いでやってきた

補足

那智勝浦の温泉といえば,忘帰洞です.忘帰洞があるホテル浦島へは那智勝浦港の桟橋から船が出ているので,それに乗るため待っていると,突然雨が降り出し,またたく間に豪雨となりました.桟橋には雨よけはあるのですが,真横から雨が降ってくるので全く意味をなさず,傘を横に向けてなんとかしのぎました.ただ,晴れ上がるのもあっという間で,船がやってくる頃にはすっかり青空になっていました.