舟遊江州八幡水郷 其一

微涼微暖意安然
輕舸徐過不乱漣
水色如酥寧可喜
一郷插了萬千田

2009年5月

押韻

然・漣・遍:下平声一先韻

訓読

舟にて江州八幡の水郷に遊ぶ 其の一

微涼 微暖 意は安然たり
軽舸 徐ろに過ぎて 漣を乱さず
水色 酥の如きは寧ろ喜ぶべし
一郷 挿了す 萬千の田

安然:心が安らかに落ち着いているさま
輕舸:小舟
:さざなみ
:クリームやヨーグルトなどの乳製品.泥を酥にたとえた例としては韓愈の《早春》に「天街小雨潤如酥」とあるのが有名.菅茶山の《插田歌同諸子賦》にも「碌碡從横土如酥」とある.
插田:田植えをする
:動詞のあとについて完了の意味を示す助字。

船で近江八幡の水郷に遊ぶ

すこし涼しくもあり,すこし暖かくもあり,気分はやすらかに落ち着いている
小舟はゆっくりと過ぎていき,川面のさざなみを乱すこともない
水の色はクリームのように濁っているのは,むしろ喜ぶべきことだ
なぜなら,水郷じゅうの数多くの田んぼで田植えが無事終わったということだからだ

補足

ゴールデンウィークに近江八幡の水郷と賤ヶ岳へ詩を作りに出かけました.

近江八幡の水郷めぐりは桜の時期が最もにぎわうようですが,船頭さんによればその時期は水の上ではまだ肌寒く,5月くらいのほうが快適なのだそうです.実際,当日の天気はあまりよくはありませんでしたが,気温はちょうどいいくらいで気持ちよく水郷めぐりを楽しめました.

この時期,水郷の水は一年で最も濁っています.周辺で田植えが行われるため,田んぼの泥が川に流れ込むからです.詩の後半にはこのことを詠み込みました.