下鴨神社古書市 其一

朱夏午陽穿碧楓
潺湲流水送涼風
淸区書市珍篇列
遮莫蠧魚眠巻中

2009年8月

押韻

楓・風・中:上平声一東韻

訓読

下鴨神社古書市 其の一

朱夏の午陽 碧楓を穿ち
潺湲たる流水 涼風を送る
清区の書市 珍篇列(なら)ぶ
遮莫(さもあらばあれ) 蠧魚の巻中に眠るは

朱夏:夏。五行説では夏に対応するのが朱色
午陽:昼の太陽
穿:うがつ。穴をあける。ここでは青楓の葉のあいまから日差しがもれていること
潺湲:水の流れる音,さらさら
淸区:清浄なる区域,寺や神社の境内など
珍篇:貴重な書物
遮莫:「さもあらばあれ」と訓じ,以下のことはどうでもいい,かまいはしない,の意
蠧魚:しみ。書籍や衣類を食う虫

下賀茂神社の古書市

真夏の午後の日差しが青楓の葉あいから漏れ
さらさら流れる水が涼しい風を送ってくる
清浄なる神社の境内での古本市では貴重な書物が並んでいる
その価値をおもえば本の中にシミが眠っていることなど気にすることではない

補足

下鴨神社で毎年行われる夏の古本祭りを詠んだ詩です。