元朝對鏡

不見雙親已幾年
獨傾椒酒自堪憐
醉顔映鏡二毛短
疑是家君在眼前

2023年1月

押韻

年・憐・前:下平声一先韻

訓読

元朝 鏡に対す

双親に見えざること 已に幾年
独り椒酒を傾けて 自ら憐れむに堪へたり
酔顔 鏡に映ずれば 二毛 短く
疑ふらくは是れ 家君の眼前に在るかと

椒酒:山椒等の生薬を漬け込んだ薬酒。正月元旦の祝い酒に用いる。屠蘇。
二毛:白髪まじりの髪
家君:自分の父親のこと

元旦に鏡に向かって詠む

両親に会うことなくすでに何年が過ぎただろうか
ひとりで屠蘇を飲んでいると自分で自分があわれに思われる
酔った顔を鏡に映してみると白髪まじりの髪も短くなってしまっていて
父親が目の前にいるのではないかと思ってしまった

補足

春風吟社1月提出の題詠です。元旦という背景と、鏡に顔を移して感じたことをどう結び付けるかが詩題の肝です。令和5年の正月も諸事情により実家に帰省できなかったため、その感慨を詠んでみました。