曉起渉園

平旦氣淸詩興催
侵寒獨訪小園來
無歌無酒非無喜
一朶魁花爲我開

2020年3月

押韻

上平声十灰韻

訓読

暁起 園を渉る

平旦の気 清くして 詩興 催し
寒を侵して独り小園を訪ね来たり
歌無く酒無きも喜び無きにしも非ず
一朶の魁花 我が為に開く

曉起:明け方に起きる
:歩く。歩き回る。陶濳《歸去來辭》「園日渉以成趣、門雖設而常關(園は日に渉れば以て趣を成し、門は設けたりと雖も常に関せり)」
平旦氣:明け方のすがすがしい気持ち。《孟子・告子上》「其日夜之所息、平旦之氣、其好惡與人相近也者幾希、則其旦晝之所為、有梏亡之矣。」
詩興:詩を作りたい気持ち。
侵寒:寒さをものともせず。
魁花:他にさきがけて咲く花。主に梅を指す。

明け方に起きて庭園を歩く

明け方の気持ちはすがすがしく、詩を作りたい気持ちがわいてきたので
寒さをものともせず、独りで小さな庭園を訪ねて来た
歌をうたって騒ぐわけでも、酒を飲むわけでもないが、喜びがないわけでもない
ひと枝の梅の花が私のために開いてくれているから

補足

春風吟社3月提出の題詠です。春先に明け方の庭園という場面設定なので、素材はだいたい決まっており、それらをどうまとめてオチをつけるか、というところが腕の見せ所になる詩題といえます。

結句は、亀井小琴(1798~1857 亀井昭陽の娘)が昭陽の門人・三苫雷首から贈られたプロポーズの詩に答えて詠んだ詩の中の有名な句「今夜 君が為に開く」から着想を得ました。