寒夜讀書

天歩艱難殃正酣
復繙史籍策頻探
寒燈明滅心無倦
讀到歐洲鼠疫譚

2021年1月

押韻

下平声十三覃韻:酣・探・譚

訓読

寒夜読書

天歩艱難にして 殃 正に酣なり
復た史籍を繙いて 策 頻りに探る
寒灯 明滅するも 心 倦む無く
読み到る 欧洲 鼠疫の譚

天歩艱難:天の運行に支障があって順調でない。時運が悪く困難が多い。
:物事のまっさかり。
鼠疫:ペスト。黒死病。有史以来、何度かパンデミックを引き起こしてきた。特に14世紀ヨーロッパでの大流行は人口の激減をもたらし、労働力不足による社会システムの変化が中世から近世への転換の契機となった。 大正天皇御製《聞鼠疫流行有感》「如今鼠疫起東京 我正聞之暗愴情」

寒夜の読書

時運のめぐりが悪く今やわざわいの真っただ中だ
今夜また歴史書を開いてしきりに対策を探る
寒々しい灯火は明るくなったり暗くなったりして今にも消えてしまいそうだが、私の心は倦むことはなく
ヨーロッパでのペスト流行の話まで読み進んだところだ

補足

春風吟社2月提出の題詠です。シチュエーションが限定されていますし、菅茶山の『冬夜讀書』というあまりに有名な詩があるため、その影響から逃れることが難しい題だと言えますが、今回に関してはコロナの影の濃い作品になってしまいました。