鴨東竹枝

落花光底水流暗
流水聲中花落閑
斂鬢紅英慵拂去
欲煩郎拭倒雲鬟

2009年4月

押韻

閑・鬟:上平声十五刪韻(対句のため起句は踏み落とし)

訓読

鴨東竹枝

落花光底 水流るること暗く
流水声中 花落つること閑(しづ)かなり
斂鬢の紅英 払い去るに慵(ものう)く
郎を煩はして拭はしめんと欲して雲鬟を倒す

鴨東:鴨川の東。四条河原から八坂神社にかけての一帯。江戸時代以来の花街。
竹枝:土地の風俗や恋愛などを民謡風に詠んだ詩のこと。
底:なか、うち。
斂鬢:きれいに整えた鬢(耳ぎわの髪)
紅英:赤い花びら
郎:おとこ。女性が夫や彼氏を呼ぶ語
雲鬟:美しく結いあげた女性の髪。「鬟」はみずら、わげ、髪をたばねて輪にしたもの。

鴨東小唄

降りしきる落花の光の中で水は暗く流れ
流れる水の音の中で花はしずかに散っている
きれいに整えた鬢についてしまった花びらを自分で払うのが面倒なので
結いあげた髪を横に傾けて貴方に取ってもらいましょう

補足

この詩は「第25回国民文化祭・おかやま2010」の漢詩の部で秀作に入った詩ですが、掲載し忘れていたことがわかったので今さらですが載せておきます。

詩の後半の主語は、一般の女性としても通じますが、ここはやはり芸妓さんを思い浮かべてもらうほうがいいと思います。