客中値春

男子離家不憶家
客蹤信興到天涯
東風歳歳促人老
荏苒無爲又見花

2019年3月

押韻

下平声六麻韻:家・涯・花

訓読

客中 春に値ふ

男子 家を離れては 家を憶はず
客蹤 興に信せて 天涯に到る
東風 歳歳 人の老ひを促し
荏苒 為す無く 又た花を見る

客中:旅のさなか。あるいは異郷暮らしのさなか。
客蹤:旅人の足跡。旅の跡。
:まかせる
荏苒:歳月がながびくさま。長い歳月をすごすさま。

旅の中で春を迎える

男子たるもの、いったん家を離れたからには家をなつかしく思ったりはしない
興の向くまま天の果てまでさすらったものだ
そんな暮らしのなかでも春風は毎年毎年、人に年を取らせ
長い年月を無為に過ごしてきた私は、また空しく春を迎えて花を見ている

補足

春風吟社4月提出の題詠です。起句がちょっと時代がかった感じながら格好いい句になったので、あとは勢いで結句まで作り上げた感じです。