丁酉元旦次福翁韻【2017.01】(丁酉元旦 福翁の韻に次す)
丁酉元旦次福翁韻
迎歳僑居異昨春
萍蹤不定是詩人
無杯用椀屠蘇酒
微醉忺吟志氣新
2017年1月
押韻
春・人・新:上平声十一真韻
訓読
丁酉元旦 福翁の韻に次す
歳を迎ふる僑居 昨春に異なる
萍蹤 定まらざるは是れ詩人
杯無くして椀を用ふ 屠蘇の酒
微酔 吟ぜんと忺(ほっ)す 志気の新たなるを
注
丁酉:ひのとのとり。平成29(2017)年。
福翁:福澤諭吉。
次韻:同じ韻字を使って詩を作ること。この詩は福澤諭吉が明治30(1897)年元旦に作った詩「丁酉元旦」の韻字「春・人・新」を用いている。
僑居:かりずまい。他郷のすまい。
萍蹤:「萍」は浮き草、「蹤」はあしあと。浮き草のようにあちこちさまよって落ち着かないこと
忺:望む。願う。~したいと思う。「欲」に同じだが、「欲」は仄声、「忺」は平声。
志氣:意気込み。こころざし。
訳
丁酉の年の元旦に福澤諭吉の詩に次韻して作る
新年を迎える仮住まいは去年とは別の家
浮き草のようにさまよって定まらないのが詩人というものだ
こんな落ち着かない暮らしではさかずきなどなく、お椀を使ってお屠蘇を飲む
ほろ酔い気分になったところで、新たな意気込みを詠じることとしよう
補足
年の干支は「丁酉」ですので、同じ丁酉の年の元旦に福澤諭吉が詠んだ「丁酉元旦」に次韻してみました。次韻というのは、他人の詩と同じ韻字を使って新たに詩を作ることで、詩人同士の挨拶としてよくおこなわれるほか、先人の詩に次韻することもあります。今でいうところのアンサーソングみたいなものでしょうか。
昨年は京都から神戸へ引っ越してきたので、現在の家で新年を迎えるのは初めてです。起句と承句はそのことを詠んでいます。別に放浪しているわけではありませんが、根なし草といわれても仕方ありません。一応、いいわけとして、これこそが詩人の生き方だ、と強がっておきました。福翁の詩の一家勢揃いの賑やかさとは正反対の詩になってしまいましたが、仕方ないですね。
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