帰省作

玆徑玆溪玆老杉
依然風景映征衫
客遊及久始知得
凡水凡山卻不凡

2024年1月

押韻

下平声十五咸韻:杉・衫・凡

訓読

帰省して作る

玆の径 玆の渓 玆の老杉
依然たる風景 征衫に映ず
客遊 久しきに及んで 始めて知り得たり
凡水 凡山 却って凡ならざるを

玆:これ、この、ここ。現に目前にある事物を指す代名詞。「此」にほぼ等しいが、「此」が仄声なのに対し、「玆」は平声。
依然:もとのままであるさま。
征衫:旅衣。
凡水凡山:平凡でありふれた山水。用例としては、菅茶山『黄葉夕陽村舍詩後篇』中「竹田路上」の頼山陽の欄外評に「備土凡山凡水不足以發先生妙思、然一經題詠使人想其佳」とある。

帰省して作った詩

この小道、この谷川、この古い杉の木
昔のままの風景が旅衣に映える
長年他郷を流浪してようやく知ることができたのは
このありふれた平凡な山水こそがかえって特別なものだということだ

補足

コロナ禍などの事情が重なり、2019年の年末以来、一度も帰省ができず、今回4年ぶりの帰省となってしまいました。もともと年に1回しか帰省していませんでしたが、さすがに4年ぶりの帰省となると、かつては見慣れていた景色を見ても感慨深く、「凡水凡山卻不凡」という句が自然と思い浮かんだので、これを結句に据えて絶句に仕立ててみました。