秋日詠懷【2023.09】(秋日 懐ひを詠ず)
秋日詠懷
紛紛落葉撲鶉衣
孤鵙叫來風韻悲
終日無由停太息
醒催秋思醉憂時
2023年9月
押韻
上平声四支韻:衣・悲・時
訓読
秋日 懐ひを詠ず
紛紛たる落葉 鶉衣を撲ち
孤鵙 叫び来たって 風韻 悲し
終日 太息を停むるに由無し
醒めては秋思を催し 酔ひては時を憂ふ
注
紛紛:乱れ散るさま
鶉衣:つぎはぎだらけの破れ衣。みすぼらしい服。
風韻:風の音。風の響き。
太息:ため息。
秋思:秋の物思い。秋のものさびしい気持ち。「思」字は本来、動詞の「おもう」は平声、名詞の「おもい」は仄声だが、実際には平仄両用として扱っている例が多いように思われる。
訳
秋のひと日、思いを詠む
降りしきる落葉が我がみすぼらしい服を打ち
孤独なモズが甲高い声を上げて風の音が悲しく響く
こんな日は一日中、ため息を止めるすべもない
しらふでいれば秋の物思いをもよおしてため息が出るし、酒をあおれば今度は時世を憂えてため息が出るのだ
補足
春風吟社10月提出の題詠です。「秋の日の思いを詠む」というのは、詩題としては平易といえば平易にも思えますし、自由な場面設定の余地もあるように思えます。しかし、漢詩の場合(あるいは和歌でも)、「春愁秋思(春は愁い、秋はもの思う)」という発想の枠組みがいわば常識としてあり、それに沿うにせよ、そこから敢えてはずれるにせよ、その前提を踏まえておかないと、詩題を理解してない詩だと見なされてしまうのが難しいところです。
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