獨夜煮茗【2023.10】(独夜 茗を煮る)
獨夜煮茗
萬籟寥寥寒夜沈
索居殘燭對孤心
獨空煮茗獨空啜
飢渇雖休愁却深
2023年10月
押韻
下平声十二侵韻:沈・心・深
訓読
独夜 茗を煮る
万籟 寥寥として 寒夜 沈たり
索居の残燭 孤心に対す
独り空しく茗を煮 独り空しく啜れば
飢渇 休(や)むと雖も 愁ひは却って深し
注
獨夜:ひとり寂しく居る夜。 杜甫《旅夜書懷》「細草微風岸 危檣獨夜舟」
茗:元々の意味は「茶の芽」だが、多くの場合、茶と同じ意味で用いる。「茶」は平声、「茗」は仄声のため、平仄で使い分けることが多い。
萬籟:万物の声。さまざまな物音。
沈:沈沈に同じ。夜のしずかに更け行くさま。
索居:世の人と交わらず寂しく居ること。
孤心:孤独で寂しい心。 《後漢書和熹鄧皇后紀》「先帝早棄天下、孤心煢煢、靡所瞻仰」
訳
孤独な夜にお茶を煮る
すべての物音がものさびしく、寒い夜が静かに更けていき
わび住まいの消えかかる灯火が私の孤独な心に向かい合っている
ひとりで空しく茶を煮て、その茶をひとりで空しく啜れば
空腹と喉の渇きはおさまるが、心の愁いはかえって深まるばかりだ
補足
春風吟社2023年11月提出の題詠です。詩題によって場面設定はなされているので、方向性が決まれば作りやすい題のように思います。拙作では独夜の孤独を強調する方向で詠みましたが、逆に孤独な中にもある安らぎやささやかな楽しみを詠むポジティブな方向もあり得ます。
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