初夏卽目

近山滴綠遠凝靑
初夏風光万象寧
最好辞巣學飛燕
頡頏緩急閃輕翎

2023年6月

押韻

靑・寧・翎:下平声九靑韻

訓読

初夏即目

近山 緑を滴らし 遠きは青を凝らす
初夏の風光 万象 寧し
最も好し 巣を辞して飛ぶを学ぶの燕
頡頏 緩急 軽翎を閃かす

卽目:目に見たままを詠じる、またその詩。
頡頏:上に向かって飛び、下に向かって飛ぶ
軽翎:軽やかな翼

初夏の景色を見たままに

近くの山には緑が滴り、遠くの山では青が凝縮され
初夏の風景はすべてが穏やかだ
最も好いのは、巣立ったばかりで飛行を学んでいる燕が
上向きに飛び、下向きに飛び、ゆっくり飛び、素早く飛び、軽やかな翼をひらめかせている様子だ

補足

淡泊で率直な叙景詩を詠んでみました。起句は「近山滴綠、遠山凝靑」という対の、2つめの「山」を省略したものです。この手の省略法は漢詩を作るうえで必須の技法です。