卜新居入大阪

蓬轉萍浮三十年
寓居難記幾回遷
未知何處可埋骨
又索靑山渡澱川

2023年7月

押韻

年・遷・川:下平声一先韻

訓読

新居を卜して大阪に入る

蓬と転じ 萍と浮かぶ 三十年
寓居 記し難し 幾回 遷りしかを
未だ知らず 何れの処に骨を埋むべきかを
又た青山を索めて 澱川を渡る

卜新居:新居にすべき場所を占いで決める。転じて新居を定めること。
蓬轉萍浮:蓬のように転がり、萍のように浮かぶ。あてなくさまようさま。蓬は「よもぎ」ではなく、タンブル・ウィード(枯れると根本からちぎれ球状になって風に転がる植物)の一種であるオカヒジキ。
難記:思い出すのが難しい。「記」は記憶する、思い出す。
靑山:骨を埋めるべき場所。 蘇軾《予以事繋御史台獄…故作二詩授獄卒梁成以遺子由》「是處靑山可埋骨 他時夜雨獨傷神」 釈月性《將東遊題壁》「埋骨何期墳墓地 人間到處有靑山」
澱川:淀川。その流路はほぼ兵庫県と大阪府の境目に重なる。

新居を定めて大阪に入っていく

故郷を出てから三十年近く、オカヒジキのように転がり浮草のようにさまよい浮かび続け
仮住まいが何度移ったか思い出すこともできない
この骨をどこに埋めるべきなのか未だにわからず
今また死に場所をもとめて淀川を渡り大阪に入っていくのだ

補足

2023年12月より、神戸のポートアイランドから大阪市南部まで2時間かけて通勤していましたが、6月に大阪に引っ越しました。正直、ポートアイランドも家も気に入っていたので、できれば引っ越したくなかったのですが、往復4時間の通勤時間を有効活用するのが難しく、結局引っ越すことになりました。そんな事情があって、あまり楽し気ではない卜居の詩になっています。