ホトトギス 杜鵑

客中聞鵑

靑天綠樹映征衣
或入深山或渉磯
詩興未殫心未倦
杜鵑休叫不如歸

2022年4月

押韻

衣・磯・歸:上平声五微韻

訓読

客中 鵑を聞く

青天 緑樹 征衣に映じ
或ひは深山に入り 或ひは磯を渉る
詩興 未だ殫きず 心 未だ倦まず
杜鵑 叫ぶを休めよ 帰るに如かずと

鵑:杜鵑に同じ。ホトトギス。
不如歸:帰るにしかず。帰った方がいい。ホトトギスの鳴き声を言葉に置き換えたもの。また、ホトトギスの別名でもある。伝説では、ホトトギスは蜀の望帝の化身であり、蜀が秦に滅ぼされて以来、嘆き悲しんで「不如帰去(帰り去るに如かず)」と血を吐きながら鳴くようになったという。

旅の最中にホトトギスを聞く

空の青さと木々の緑が旅ごろもに照り映えて
あるときは深山に分け入り、あるときは磯辺を歩く
このように変化の多い旅ゆえ詩興は尽きることなく、気持ちも倦むことがない
だからホトトギスよ、「帰るにしかず、帰るにしかず」と叫び鳴くのをやめてくれ

補足

5月提出の春風吟社の題詠です。「帰るにしかず(帰り去るにしかず)」がホトトギスの鳴き声であり別名であることから、旅とホトトギスは密接な関係にあり、武田信玄にも「旅館聴鵑」という詩があります。旅先でホトトギスの「不如帰」という鳴き声を聞いて郷愁をもよおす、というのが基本的なパターンですが、今回は少しひねって、「旅を楽しんでいるのだから、帰るにしかずなどと鳴いてくれるな」という趣向にしました。ただし、ホトトギスの声が気になるということは実は帰りたい思いがあるからで、それを隠すための強がりと見ることもできるかもしれません。そのあたりは読む人の自由です。