餞春

老鶯鳴罷燕飛頻
路上落花歸芥塵
堪恨苦心徒鍊字
餞春詩裏叵留春

2022年3月

押韻

頻・塵・春:上平声十一眞韻

訓読

春を餞る

老鶯 鳴き罷み 燕 飛ぶこと頻りに
路上の落花 芥塵に帰す
恨むに堪へたり 苦心して徒らに字を錬るも
餞春詩裏 春を留むべからざるを

餞春:春の去るのを惜しみながら送ること
鍊字:詩文の字句を推敲する。 萬里集九《題畫軸》「一詩白髪鍊何字」
叵:べからず。不可。可の字を反対にしてできた字

春をおくる

さえずりの季節をすぎたウグイスの声はやみツバメは忙しそうに飛び交い
路上に落ちた花は塵あくたと消えていく
恨めしいのは、どんなに苦心して無駄に字句を錬っても
春を餞る詩の中に春をとどめ得ないことだ

補足

4月提出の春風吟社の題詠です。晩春の景物と過ぎ行く春を惜しむ気持ちを盛り込んで、しかもただの説明にならないようにしなければならず、テーマ自体がありふれたものだけに難しく感じました。