旅懷

萍泊何遑拂旅塵
夕陽偏促憶雙親
早春客舎氣猶冷
欲作家書呵手頻

2022年2月

押韻

塵・親・頻:上平声十一眞韻

訓読

旅懐

萍泊 何ぞ旅塵を払ふに遑あらんや
夕陽 偏へに促す 双親を憶ふを
早春の客舎 気 猶ほ冷ややかに
家書を作らんと欲して 手を呵すること頻りなり

旅懷:旅先で心にいだく思い。
萍泊:萍(浮き草)のように漂いさまようこと。
遑:~するひまがある
家書:家族に送る手紙。張籍《秋思詩》「欲作家書意萬重」
呵手:手に息を吹きかけて暖める

旅先での思い

浮草のようにさまよう人生に旅塵を払うひまもなく
夕日を眺めればことさらに両親を思う気持ちがうながされる
早春の旅館はまだまだ寒く
家へ送る手紙を書こうとして何度も息で手を暖めている

補足

春風吟社3月提出の題詠です。題は単に「旅懷」なので、季節の要素は入れなくてもよいのですが、提出時の季節に合わせて早春の設定で詠んでみました。