時事有感

貪狼難飽每窺機
遂及干戈羽檄飛
覇道計謀須折挫
萬邦一意詠無衣

2022年3月

押韻

機・飛・衣:上平声五微韻

訓読

時事 感有り

貪狼 飽き難く 毎に機を窺ひ
遂に干戈に及んで 羽檄 飛ぶ
覇道の計謀 須らく折挫すべし
万邦 意を一にして 無衣を詠ぜん

貪狼:①欲深いオオカミ ②欲深くて心がよこしまなこと。またそのような人物。 ②の場合、「狼」は「道にもとる」の意。 ここでは②の意味だが、比喩として①の意にとってもかまわない。
飽:満足する
每:「つねに」と訓じ、毎度たびたびの意。
干戈:たてとほこ。武器。転じて、戦争のこと。
羽檄:危急を知らせて兵を招集したり援軍を求めたりするための告げ文。ここではプーチンの下した動員令。
覇道:覇者の道。武力をたのんで正義を軽視するやり方。王道の反対。
折挫:折ってくじく。挫折させる。
無衣:春秋時代、呉に攻め込まれて存亡の危機に陥った楚の昭王は申包胥を秦に派遣して援軍を求めた。秦の哀公は断わろうとしたが、申包胥が七日間飲まず食わずで泣き続けるのを見て心を動かされ、「無衣」詩を歌って受諾の意を伝えた。 《詩経・秦風・無衣》「豈曰無衣、與子同袍、王于興師、修我戈矛、與子同仇。豈曰無衣、與子同澤、王于興師、修我矛戟、與子偕作。豈曰無衣、與子同裳、王于興師、修我甲兵、與子偕行。」

時事に感じることがあって詠んだ詩

欲深く邪悪なプーチンは飽くことを知らず何度も機を窺ってきたが
遂に武力行使に及んで動員令が下った
かくのごとき覇道のはかりごとは必ずくじかなければならない
万国が心を一つにして、かつて楚から援軍を求められた秦の哀公がしたように「無衣」詩を歌い、ウクライナを救う決意を示そう

補足

こんな詩を作ったところでウクライナにとって何の助けにもなりませんし、プーチンにとっても痛くも痒くもないことは百も千も承知です。承知ですが、詠まずにはいられないのです。