元朝有感

當世文明進歩多
新春事象亦如何
請看賀信瞬時到
不託雙魚託電波

2020年1月作

押韻

多・何・波:下平声五歌韻

訓読

元朝 感有り

当世の文明 進歩多し
新春の事象 亦た如何
請ふ看よ 賀信の瞬時に到るを
双魚に託さず 電波に託す

当世:今の世。
賀信:年賀状、年賀のあいさつ。この詩で瞬時に到る賀信はもちろんメールやLINEメッセージである。太刀掛呂山《新春雜詠》「賀信超千披閲匆」 
雙魚:遠方から来た客の土産の二匹の鯉の中に手紙が入っていたという故事。またこの故事から手紙のことを「双魚」「双鯉」「鯉魚」「鯉書」などと表現する。《飮馬長城窟行(樂府)》「客從遠方來 遺我雙鯉魚 呼兒烹鯉魚 中有尺素書」

元旦に感じたこと

今どきの世の中は進歩がはなはだしいが
新年の事柄のありさまはどうであろうか
みたまえ、年賀のあいさつが瞬時に届いた
鯉の中に手紙を託したのは昔の話、今や電波にのせて届けるのだ

補足

春風吟社の1月提出の題詠です。結句の「不託雙魚託電波」はいつか使おうと思ってあたためていたフレーズですが、ちょうどいいと思って、この句から詩を組み立てていきました。

承句の下三字は初案は「亦如何」でしたが、その後いろいろ迷った末、提出直前に「亦同他(亦た他に同じ)」に改めたのですが、2月の添削・批評で「『亦た他に同じ』はわかりにくい。『亦た如何』にしたほうがいいのでは」と指摘されました。図らずも僕の初案と同じだったので、「たしかに直さないほうがよかったな」と納得しました。

推敲してよくなることもあれば、悪くなることもあります。そこが難しいところでもあり、おもしろいところでもあります。