奉賦令和二年御題 望 其一

苟抱大望須泰然
不經寒苦志難全
古來俚諺有真理
桃栗三年柿八年

2020年1月作

押韻

然・全・年:下平声一先韻

訓読

令和二年の御題を賦し奉る 望 其の一

苟しくも大望を抱かば 須らく泰然たるべし
寒苦を経ずんば 志 全うし難し
古来 俚諺に真理有り
桃栗三年柿八年

御題:宮中歌会始のお題。令和二年(2020年)のお題は「望」
:もしも。仮にも。
俚諺:民間のことわざ。俗諺。
桃栗三年柿八年:芽が出てから実がなるまでに、桃や栗は3年、柿は8年かかるように、物事をなしとげるにはそれなりの時間と苦労が必要ということわざ。このあとに続く言葉としては、「枇杷は九年でなりかねる」「梅は酸い酸い十八年」「柚子のばかたれ十八年」などさまざまなバリエーションがある。

令和二年の歌会始の題で詩を作りたてまつる 「望」

かりにも大望をいだくのであれば、どんなときも泰然としていなければならない
つらく苦しいときを経なければ、志をまっとうするのは難しいのだから
昔から俗諺にこそ真理があるものだ
「桃栗三年柿八年」というではないか

補足

今年も春風吟社に御題詩を提出しましたが、「望」というのは難しかったです。「願望」の「望」もあれば、「眺望」の「望」もあり、何をどう詠むか、選択肢が多すぎて、迷い始めるとキリがなくなるテーマです。新幹線の「望(のぞみ)」というアイデアもあったのですが、奇をてらいすぎているかと思い、やめました。

大望を果たすには困難を乗り越えなければならないというありきたりの内容ですが、結句に日本のことわざをそのまま取り入れることで目新しさを出して何とかまとめました。

ちなみに写真は桃そっくりのお菓子です。今年の正月帰省のお土産に買ったものです。