除夜偶感

詩債甚多心力窮
對燈把筆獨吟慵
推敲數刻歳將盡
頻請緩撞除夜鐘

2019年1月

押韻

上平声二冬韻:窮(東韻からの借韻)・慵・鐘

訓読

除夜偶感

詩債 甚だ多くして 心力 窮まり
灯に対して筆を把れども 独吟 慵し
推敲 数刻 歳 将に尽きんとし
頻りに請ふ 緩やかに撞け 除夜の鐘

詩債:詩の負債。作らなければいけないのにまだ作っていない詩がたまっていること。
緩撞除夜鐘:除夜の鐘をゆっくり撞く。 蘇軾《縦筆》「報道先生春睡美、道人輕打五更鐘(報道す先生の春睡美なるを、道人軽く打て五更の鐘)」 伊達政宗《中秋賞月於松島》「思見淸光佳興荐、道人緩打五更鐘(清光佳興の荐を思い見て、道人緩やかに打て五更の鐘)」

除夜に感じたこと

作らなければいけない詩がたまりすぎて心の力も尽きてしまいそうだ
灯火に向かい合って筆をとるが、独りで詩を詠むのは億劫なことだ
推敲するうちに数刻がすぎ、もうすぐ年が暮れそうなので
せめて除夜の鐘はゆっくりと撞いてほしいと、心の中でしきりに願うのだ

補足

除夜の鐘が終わるまではまだ年は明けない、という考えで、夜明けの鐘をゆっくり撞いてくれという政宗の詩にならって、除夜の鐘をゆっくり撞いてくれという詩にしてみました。もちろん実際には鐘が終わろうが終わるまいが、1月1日の0時になれば新しい年になることは言うまでもありません。