閑居漫吟

腹裡書堆常要曬
杖頭錢盡豈須悲
厭離名利心身適
不飯無飢飮水肥

2024年8月

押韻

上平声五微韻:悲・肥(起句は対句のため踏み落とし)

訓読

閑居漫吟

腹裡の書 堆くして 常に曬すを要す
杖頭の銭 尽くるとも 豈に悲しむを須ひんや
名利を厭ひ離れて 心身 適すれば
飯はずして飢うる無く 水を飲みても肥ゆ

腹裡書:書物を読んで腹の中にたくわえた内容。晋の郝隆は七月七日(当時、衣を虫干しする風習があった)になると庭に寝転がって「腹の中の書を晒しているのだ」とうそぶいた。 《太平御覽・人事十二、腹》「世説曰、郝隆七月七日出日中仰臥。人問其故。答曰、我曬腹中書耳」(なお、世説新語では「我曬腹中書耳」は「我曬書」となっている)
杖頭錢:晋の阮脩が外出の際に杖の頭に百銭を掛け、酒店に至るとその金で酒を飲んだことから、酒を買うための金を指す。 《晋書・阮脩傳》「常歩行以百錢掛杖頭、至酒店便獨酣暢」
飲水肥:悩みがなく心が満ち足りていれば、水を飲むだけでも十分肥えることができる。 白居易《歸履道宅》「不論貧與富 飲水亦應肥」

心静かな暮らしで気まぐれに詠む

腹の中に多く蓄えた本を虫干しするため年中日向ぼっこをしなければならぬ
酒を買う金は尽きてしまったが、それでも悲しむ必要はない
名利を嫌い離れて心身が快適でさえあれば
飯を食わずとも飢えることはないし、水を飲むだけでも肥えることができるのである

補足

起承の対句が何となくできたので、それに合う転結をこしらえて絶句に仕立てました。起承の対句は故事によっていますが、腹の中の書物とか杖の頭の銭というのは、故事を知らなくても何となく伝わるのではないかと思います。