晩春偶成

晏起仰軒飛燕斜
懶僮輟帚向吾嗟
春風情意甚難解
先日開花今散花

2024年4月

押韻

下平声六麻韻:斜・嗟・花

訓読

晩春偶成

晏起 軒を仰げば 飛燕 斜めなり
懶僮 帚くを輟(や)め 吾に向かって嗟(なげ)く
春風の情意 甚だ解し難し
先日は花を開かせ 今は花を散らす

晏起:朝おそく起きること。朝寝覚め。
懶僮:怠け者の下男。
輟帚:掃くのをやめる。掃除を中断する。
春風情意~:これ以下最後まで「懶僮」のセリフ。怠け者なので落花を掃くのが面倒臭くて花に悪態をついているのである。
先日:このあいだ。現代日本語と同じ。 《漢書·鄒陽傳》「吾先日欲獻愚計」

晩春たまたま出来た詩

朝寝覚めに軒を仰げば燕が斜めに飛んでいく
そこへ怠け者の下男がやってきて庭を掃く手を止め、私に向かってこう嘆く
「私には春風の気持ちがさっぱりわかりません
このあいだ自分で花を開かせたくせに今はその花を散らしているんですから」

補足

春風吟社2024年4月提出の題詠です。題詠ですが、「晩春偶成」なので季節が晩春という以外にしばりがなく、ほとんど自由題ではないかと思ってしまいます。ただし「偶成」ですので、「たまたま出来た」感を出さないといけません。いかにも苦吟して出来上がったという雰囲気が出てはいけませんので、実際には苦吟したとしても、その跡を見せてはいけないのです。晩春のけだるい雰囲気のなかの何ということもない日常がたまたま詩になりました、というポーズで詠むのが題詠としての「晩春偶成」ということになります。