自嘲【2024.03】
自嘲
釜竈寥寥米桶空
賣書典劔換靑銅
人生過半已徒費
猶信愈窮詩愈工
2024年3月
押韻
上一声東韻:空・銅・工
訓読
自嘲
釜竈 寥寥として 米桶 空し
書を売り 剣を典して 青銅に換ふ
人生の過半 已に徒費するも
猶ほ信ず 愈〻窮すれば 詩 愈〻工みなると
注
釜竈:釜とかまど。
米桶:米櫃。
賣書典劔:書物や剣を売ったり質に入れたりする。書剣は士大夫が常に携帯すべきものだが、それらをも手放さざるを得ないほど困窮しているということ。
靑銅:銅銭。したがって少額のお金。 蘇軾《清遠舟中寄耘老》「今年玉粒賤如水 青銅欲買囊已虛」
愈窮詩愈工:不遇(貧乏)になればなるほど詩がうまくなる。 欧陽脩《梅聖兪詩集序》「蓋愈窮則愈工、然則非詩之能窮人、殆窮者而後工也」
訳
自嘲
かまどは寂しく静まりかえり、米櫃は空っぽだ
士大夫の象徴である書物も剣も売り払い質に入れて、はした金にかえた
人生の半分以上をすでに無駄に費やしてしまったというのに
欧陽脩の「貧乏になればなるほど詩がうまくなる」という言葉を自分は今なお信じているのだ
補足
欧陽脩は「詩が人を困窮させるのではなく、困窮したのちに詩が上手くなるのだ」と言っていますが、しかし、この言葉を信じて詩が上手くなるために困窮を厭わない人がいたとすれば、それは結局、詩が人を困窮させたのと同じことではないかとも思います。
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