靑淵澁澤先生歿後九十年書感【2021.11】(青淵渋沢先生没後九十年 感を書す)
靑淵澁澤先生歿後九十年書感
經濟致力及多年
論語算盤心永傳
泉下至今應自問
何時義利兩能全
2021年11月
押韻
年・傳・全:下平声一先韻
訓読
青淵渋沢先生没後九十年 感を書す
経済に力を致すこと 多年に及び
論語と算盤の心 永く伝ふ
泉下 今に至るも 応に自問すべし
何れの時にか 義利 両つながら能く全きと
注
靑淵:渋沢栄一(1840~1931)の号。1931年11月11日没。
論語算盤:論語と算盤。渋沢の道徳経済合一思想を象徴する言葉であり、著書の題名でもある。渋沢自身の詩中でも「論語算盤説」と表現されている。 澁澤靑淵《偶成》「笑吾論語算盤説 慫慂支那起業來」
泉下:あの世。死後の世界。
結句:渋沢自身の詩句をほぼ借用した。 澁澤靑淵《己巳元旦書感》「義利何時能兩全 毎逢佳節思悠然」 《第一銀行創立五十年書感》「弘濟博施業永傳 可知利義兩能全」
義利:道徳上の正義と経済上の利益
訳
渋沢栄一先生の没後90年に感じることを記す
渋沢先生は長年にわたって経世済民のため力を注ぎ
その「論語と算盤」の精神は現在までながく伝えられている
そんな先生だけにあの世で今もなお自問しているに違いない
いったいいつになったら正義と利益がともに達成される日が来るのか、と
補足
今年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』は開始が遅れた上に、東京五輪で途中中断するなど、逆境に見舞われながらも、従来の大河とは異なる視点で幕末以降の日本の近代化を描き切って大河ファンを満足させました。僕はといえば、ここぞとばかりに便乗して、『日本の漢詩文』に渋沢栄一の漢詩をアップしまくりました。おかげで、大河効果がなければ到底あり得ない数のアクセスをいただくことができました。そのお礼の意味もこめて、没後90年の詩を詠んでみました。
起句の「経済」は本来は「経世済民」であり、近代以降はeconomyの訳語でもありますが、この詩では両方の意味をこめました。渋沢にとってこの両者は一体のものだったはずだからです。
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