須磨寺觀楓

玉笛無聲往事空
稜稜霜氣滿禪宮
平郎埋首七堂畔
熱血于今染葉紅

2022年11月

押韻

空・宮・紅:上平声一東韻

訓読

須磨寺に楓を観る

玉笛 声無く 往事 空し
稜稜たる霜気 禅宮に満つ
平郎 首を埋む 七堂の畔
熱血 今においても 葉を染めて紅なり

須磨寺:正式名称福祥寺。神戸市須磨区須磨寺町にあり。一の谷合戦時、源氏方の陣地となり、源平合戦ゆかりの古刹として知られる。
玉笛:美しい笛。ここでは敦盛愛用の「青葉の笛」。
禪宮:寺院のこと。禅宗の寺に限らない。
平郎:平敦盛。清盛の甥。16歳で一の谷の戦いに加わり、熊谷直実に首を取られ、直実が出家を決意するきっかけとなった。須磨寺には敦盛の首塚がある。

平敦盛首塚
七堂:きちんとした寺院に備わる七つの建物。「七堂伽藍」という。
于今:今でも

須磨寺で楓の紅葉を観賞する

青葉の笛の美しい音色が響くことはもはや無く、当時のことはすべて過ぎ去って
いまは厳しい霜の気配が寺に満ちている
寺の立派な建物のそばには敦盛の首が埋められており
そのためであろう、名を惜しんで潔く散った敦盛の熱い血潮が今なお楓の葉を真っ赤に染めているのだ

補足

11月26日にマラニックで須磨寺の紅葉を見に行ったので、敦盛公を弔う思いもこめて詠んでみました。