山中銷夏

白雲生處免炎塵
遠入深山似避秦
靜晝枕肱聞澗籟
夢迷杳渺武陵津

2020年6月

押韻

上平声十一真韻:塵・秦・津

訓読

山中銷夏

白雲 生ずる処 炎塵を免る
遠く深山に入るは秦を避くるに似たり
静昼 肱に枕して 澗籟を聞けば
夢は迷ふ 杳渺たる武陵の津

銷夏:夏の暑さをしのぐ
避秦:秦の暴政を避ける。陶潛《桃花源記》「自云、先世避秦時亂、率妻子邑人來此絶境、不復出焉。」
澗籟:谷川のせせらぎの音
杳渺:はるかに遠いさま
武陵:桃花源記の舞台となった地名。 
:舟の渡し場。桃源郷への入り口近くの渡し場。《桃花源記》「南陽劉子驥、高尚士也。聞之欣然規往。未果、尋病終。後遂無問津者。」

山中で暑さをしのぐ

ここは白い雲が生まれるような山奥、下界の暑さも免れることができる
こうして山深くまで来て過ごしているのは、桃源郷の人々が秦の暴政を避けたのに似ている
静かな昼下がり、ひじを枕にして横になり、谷川のせせらぎの音を聞いていると
夢の中で私の魂は遥か遠く武陵の渡し場、桃源郷への入り口あたりをさまようのだ

補足

春風吟社7月提出の題詠です。暑苦しい下界と隔絶した山中での避暑を表現するのに、桃源郷のイメージを借りました。結句は我ながら洒落たセンテンスに仕上がったので、あとはうまく結句につながるよう作りました。