櫻花下作【2023.03】(桜花の下にて作る)
櫻花下作
香雲凝處晩風微
行欲深更猶懶歸
莫是西行攸冀景
櫻花篩月影霏霏
2023年3月
押韻
上平声五微韻:微・歸・霏
訓読
桜花の下にて作る
香雲 凝る処 晩風 微かなり
行くゆく深更ならんと欲するも猶ほ帰るに懶し
是れ 西行 冀ふ攸の景なる莫からんや
桜花 月を篩ひて 影 霏霏たり
注
香雲:よい香りのする雲。雲のように咲き誇る桜の花のたとえ。
行欲~:だんだんと~になろうとする
莫是:是れ~なる莫からんや。~ではあるまいか。
西行:平安末期~鎌倉前期の歌人、僧侶(1118~1190)。出家前の俗名は佐藤義清。院政期の新風歌人として新古今集につながるその後の和歌に絶大な影響を与えたのみならず、旅に生きた文学者として、また歌道と仏道の二つの道を追い求めた求道者として、松尾芭蕉をはじめとして後世の多くの文学者から尊崇を受けた。「願はくは花の下にて春死なんその如月の望月のころ」の歌は名歌として広く人口に膾炙している。
攸:「所」に同じ
篩月:月光を篩にかける。月光が木の葉などの隙間から漏れて降り注ぐさまのたとえ。
霏霏:雨や雪などが降りしきるさま
訳
桜の花の下で作る
香る雲が凝集したような桜の樹に夜風がかすかに吹き
だんだん夜が更けようとしているがまだ帰る気にならない
今見ているのは「願はくは花の下にて春死なん云々」と詠んだ西行法師が強く願った景色なのではなかろうか
桜の花が篩にかけた月光が雨のように降り注いでいる
補足
春風吟社四月提出の題詠です。詩題からして桜の美しさを詠むしかなさそうだと考え、西行を持ち出してそれらしい形にまとめました。
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