本朝鐵道開業一百五十年

火車機巧愕時人
汽笛高聲走鬼神
鐵路功非唯縮地
聖恩遠及普天民

2022年10月

押韻

人・神・民:上平声十一真韻

訓読

本朝鉄道開業一百五十年

火車の機巧 時人を愕かし
汽笛の高声 鬼神を走らす
鉄路の功 唯だ縮地のみには非ず
聖恩 遠く及ぶ 普天の民

鐵道開業一百五十年:明治5年9月12日(1872年10月14日)、日本初の鉄道が正式開業し、お召列車が新橋-横浜間を往復した。
時人:その当時の人々。
鬼神:死人の霊魂。また人知の及ばない超越的な存在。ここでは、「鬼神避之」の鬼神。人に害をなすあらぶる神。 《史記・李斯傳》「斷而敢行、鬼神避之」
縮地:地面を縮めて距離を接近させ瞬間移動するという仙術。 《太平廣記・神仙十二》「房有神術、能縮地脈、千里存在、目前宛然、放之復舒如舊也。出神仙傳」
聖恩:天子の恩沢。鉄道網の整備とともに、お召列車によって明治天皇は日本全国への巡行を重ね、各地の沿線住民は駅に集合整列して御料車を奉迎した。日本史上はじめて、都から遠く離れた地方の住民が、天皇と空間を共有する機会をひとしく得ることとなった。
普天:天下、全土。 《左傳・昭公七》「普天之下、莫非王土、率土之濱、莫非王臣」

本朝鉄道開業150年

汽車のからくりは当時の人々を驚かし
汽笛が高らかに鳴り響けば鬼神も逃げ出しただろう
鉄道の功績は単に仙術のように移動を速めたというだけではない
天子の恩沢が日本全国すみずみの国民まで行き渡ったのは鉄道のおかげなのだ

補足