坐雨

霏々綠雨鎖山家
檐滴打階聲轉加
一日閒居無不善
端然掩卷啜新茶

2022年6月

押韻

家・加・茶:下平声六麻韻

訓読

雨に坐す

霏々たる緑雨 山家を鎖し
檐滴 階を打つの声 転た加はる
一日 間居して 不善 無し
端然 巻を掩ひて 新茶を啜る

霏々:雨や雪がふりしきるさま
綠雨:青々とした草木に降り注ぐ雨。青葉雨。
檐滴:軒の雨だれ
階:きざはし。堂(座敷)にのぼる階段。
一日閒居無不善:一日ひまに過ごしたが、善からぬおこないはなかった。 《大學・傳六章》「小人閒居爲不善、無所不至」
端然:行儀正しく、きちんとしているさま。

雨のなか過ごす

降りしきる青葉雨が我が山家をとざし
軒の雨だれがきざはしを打つ音がますます増えていく
小人である私だが善からぬ行いもなく暇な一日を終えることができた
そこで姿勢を崩すことなく本を閉じ、ささやかな褒美に新茶をすするのだ

補足

春風吟社の6月提出の題詠です。「雨に坐す」という題は口語に訳すのが難しいのですが、雨が降る中、それを眺めながら家の中でおとなしくじっとして過ごす、という感じだと思います。題を説明するのが難しいくらいなので、詩にするのも当然難しかったのですが、いちおうそれなりの形にはなりました。