年頭試筆

不恥新年着舊衣
獨歡舊筆記新詩
我書所志君知否
朴直拙誠非野卑

2022年1月

押韻

衣・詩・卑:上平声四支韻(衣は微韻からの借韻)

訓読

年頭試筆

恥ぢず 新年 旧衣を着するを
独り歓ぶ 旧筆もて 新詩を記すを
我が書の志す所 君 知るや否や
朴直 拙誠にして 野卑に非ず

試筆:書き初めをする
朴直:飾り気がなく素直。
拙誠:言動にあらわすのが下手だが真心のあること。
野卑:粗野で下品。

年始の書き初め

新年というのに古着を着たままだが恥ずかしくはないし
使い古した筆で新しく作った詩を書き記すのを独りで喜んでいる
こんな私の書が目指すところをご存じだろうか
それは、素朴で素直で下手くそだが真心があり、それでいて下品ではない、というものだ

補足

春風吟社1月提出の題詠です。

起・承は対句なので、通常は起句を踏み落とします。「舊衣」を「舊服」にすれば踏み落としになりますが、そうすると「着舊服」が仄三連になってしまいます。「着」を平字に替えることができればいいのですが、適切な字が思い浮かばないので、仄三連を避けるために起句も押韻することにしました。