新涼散策

昨雨霽來殘暑空
傍田沿水小蹊通
今朝心解古歌意
秋氣先存風韻中

2021年8月

押韻

空・通・中:上平声一東韻

訓読

新涼散策

昨雨 霽れ来たって 残暑 空し
田に沿ひ 水に傍ひて 小蹊 通ず
今朝 心解す 古歌の意を
秋気 先づ存す 風韻の中

空:ない。尽きてなくなる。
古歌:古い和歌。藤原敏行「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」(『古今集』秋歌上・一六九)

新涼散策

昨日の雨が上がって残暑もなくなった
田んぼに沿い、川に沿って歩けば、小道が続いていく
今朝はあの有名な「秋来ぬと」の歌の意味を心から理解できる
たしかに秋の気配はまず風の音色の中に存在しているようだ

補足

春風吟社9月提出の題詠です。ただの涼しさではなく「新涼」を表現しないといけないところが難点です。悩んだ結果、名歌の力を借りることにしました。この歌は「風の音に(ぞ)」の部分を変更して替え歌にしやすい便利な歌でもあります。僕は毎年、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども走りやすさに驚かれぬる」と言っていますが、みなさんはどんな替え歌にされるでしょうか。