煎茗偶興

少小桑蓬志漫堅
老來失意只貪眠
三竿晏起煮茶處
恬淡堪忘恥瓦全


2021年6月

押韻

下平声一先韻:堅・眠・全

訓読

煎茗偶興

少小 桑蓬の志 漫りに堅きも
老来 意を失って 只だ眠りを貪る
三竿 晏起して 茶を煮る処
恬淡 忘るるに堪えたり 瓦全を恥づるを

煎茗:茶を煮る
少小:年が若いこと。また若者。
桑蓬志:桑弧蓬矢の志。昔、男の子が生まれると、桑の木の弓と蓬の矢で天地四方を射て、将来四方に雄飛することを祈ったことから、男子が四方に雄々しく活躍しようとする志。 漫:みだりに。むだに。あてもなく。やたらに。
三竿:日が竿三本ほどの高さにのぼったさま。またその時間帯。午前8時頃。
晏起:朝遅く起きること。朝寝すること。
恬淡:心静かであっさりしているさま。
瓦全:何の功績もなくいたずらに生きながらえていること。玉砕の反対。

茶を煮ながらふと興がわいて詠んだ詩

若い頃は天下に勇躍しようとする志をやたらと強く心に抱いていたが
年を取ってからは失意のうちに眠りを貪るばかり
それでも日の高くなるまで朝寝してから茶を煎るときだけは
瓦全の身を恥じる気持ちを忘れて、こだわりのない静かな心になることができるのだ

補足

春風吟社7月提出の題詠です。