溽暑有作【2021.07】(溽暑 作有り)
溽暑有作
炎蒸連日轉難當
宛若相如貪冷漿
市隠固無淸澗響
檐鈴爲借一聲涼
2021年7月
押韻
下平声七陽声:當・漿・涼
訓読
溽暑 作有り
炎蒸 連日 転た当たり難く
宛かも相如の若く冷漿を貪る
市隠 固より清澗の響き無く
檐鈴 為めに借す 一声の涼
注
溽暑:蒸し暑い
炎蒸:蒸し暑さ
轉:うたた。ますます。
當:立ち向かう。対処する。 明・釈宗泐《暑夜》「此夜炎蒸不可當」
相如:司馬相如。前漢の文人。消渇(糖尿病)をわずらっていたため頻繁にのどの渇きを訴えたという。
冷漿:冷たい飲み物。鷗外にベルリンのソーダ売りを詠んだ「賣漿婦」詩がある。 森鷗外《賣漿婦》「一杯笑療相如渇 粗服輕妝自在身 冷淡之中存妙味 都城有此賣漿人」
市隠:町なかに住んでいる隠者
借一聲涼:明・釈宗泐《暑夜》「天河只在南樓上 不借人間一滴涼」
訳
蒸し暑さのなか詩ができた
蒸し暑い日が続いてますます対処しがたくなってきた
まるで糖尿病を患った司馬相如のように冷たい飲料を貪り飲んでいる
山中に住む隠者と違ってここには涼しげな谷川の響きなどはもちろん無いが
そんな私のために風鈴は一鳴りの涼しさを貸し与えてくれた。
補足
春風吟社8月提出の題詠です。「溽暑有作」という題ですが、暑さ一辺倒では詩にしにくいので、どこかで何らかの涼しさを詠みこむのが常套手段ですが、涼しさの要素が大きくなりすぎると詩題に合わなくなってしまいます。悩んだ結果、実際の涼しさではなく風鈴の音という気分だけの涼しさを結句に置くことでバランスを取りました。
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