入梅


天黑雲低梅熟初

涓涓點滴籠庵廬

數旬好擲晴耕鍤

盡日唯繙雨讀書


2020年5月

押韻

初・廬・書:上平声五魚韻

訓読

入梅

天は黒く雲は低し 梅 熟するの初め
涓涓たる点滴 庵廬を籠む
数旬 好し 晴耕の鍤を擲って
尽日 唯だ繙かん 雨読の書

涓涓:水の滴るさま
點滴:雨だれ
好:ままよ、よろしい。
鍤:農具のすき

梅雨入り

梅の実が熟しはじめるこの頃、空は黒く雲は低く垂れこめ
ぽたぽたと滴る雨だれが我が家を包み込む
晴耕雨読の我が暮らしだが、ままよ、これから数十日のあいだは晴耕のための鋤は捨て置いて
一日中ひたすら雨読のための書物をひもとくことにしよう

補足

春風吟社6月提出の題詠です。単なる「梅雨」ではなく、「梅雨入り」の雰囲気を出さないといけないのが難しいところです。転結の「晴耕雨読」にちなんだ対句で、これから数十日間続く梅雨を迎える心持ちを詠み込むことで「梅雨入り」の雰囲気を出したつもりですが、上手くいったかどうかわかりません。