偶感

飲食固甘瓢與簞
家醪雖淡足忘寒
顯榮富貴非吾事
鴻鵠安知燕雀歡

2020年11月

押韻

上平声十四寒韻:簞・寒・歡

訓読

偶感

飲食 固より甘んず 瓢と箪
家醪 淡しと雖も 寒を忘るるに足る
顕栄 富貴は 吾が事に非ず
鴻鵠 安くんぞ燕雀の歓びを知らんや

瓢與簞:瓢飲(ひょういん)と箪食(たんし)。わりご(竹で編んだ飯を盛る器)一つの食べ物とひさご(ひょうたんで作った飲み物の容器)一つの飲み物。粗末なわずかばかりの飲食。《論語・雍也》「賢哉、回也。一簞食、一瓢飲、在陋巷。」
家醪:家で醸したどぶろく。
顕榮:身分が高くなり、栄えること
鴻鵠安知燕雀歡:秦末の反乱指導者陳勝(?~前208)は若いころ日雇い農夫をしていた。ある日、雇い主に向かって「将来偉くなってもお互い忘れないようにしよう」と語ったところ、「お前なんかが偉くなることがあるか」と馬鹿にされ、「ああ、小鳥どもに大きな鳥の志がどうしてわかるだろうか」とため息をついたという。《史記・陳渉世家》陳渉太息曰、「嗟乎、燕雀安知鴻鵠之志哉」

たまたま感じたこと

飲食はもともと粗末なもので満足しているし
自家製のどぶろくの味は薄いとはいえ寒さを忘れるのに十分だ
立身出世したり金持ちになったりするのは自分には関わりのないこと
大人物には私のような小人物の楽しみはわかりはしないだろう

補足

陳勝の有名な「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」を逆にして詩にしてみました。ただし口がいやしいので、瓢飲箪食に甘んじているというのはウソです。