日本酒

欲飲芳香撲鼻馨
味真淡遠色清泠
屈原若得嘗斯酒
應莫汨羅嘆獨醒

2020年10月

押韻

下平声九青韻:馨・泠・醒

訓読

日本酒

飲まんと欲すれば 芳香 鼻を撲って馨り
味は真に淡遠 色は清泠
屈原 若し斯の酒を嘗むるを得なば
応に 汨羅に独醒を嘆くこと莫かるべし

淡遠:あっさりした中に深遠な趣がある。もともと書画などを評する言葉だが、日本酒の奥深い味わいを表すのに転用した。
淸泠:清らかで澄んでいる
屈原:中国戦国時代の楚の政治家(B.C.340~B.C.278)。秦の策謀を見抜き楚王に頻りに諫言したがかえって疎まれ、楚の将来に絶望して「擧世皆濁我獨淸、衆人皆醉我獨醒」と嘆き、汨羅の淵に身を投げた。

日本酒

飲もうとすれば鼻に届くかぐわしい香り
味は本当にあっさりした中に奥深さがあって、色は清らかに透きとおっている
もし、あの屈原がこの酒を味わうことができていたならば
自分だけがしらふだと嘆いて汨羅に身を投げることなどせず、気持ちよく酔っぱらっていただろうに

補足

10月1日は日本酒の日ということで、日本酒をたたえる詩を作りました。「世の中の人はみな酔っぱらっているのに私だけしらふだ」と嘆いたあの屈原でも、日本酒のうまさを知れば気持ちよく酔っぱらって自殺なんかしなかっただろうに、というふざけた詩です。