良宵閑吟

空榭淸池小畫橋
倚欄帶月聽魚跳
坐來得句卻慵記
付與涼風任霧消

2020年8月

押韻

下平声二蕭韻

訓読

良宵閑吟

空榭 清池 小画橋
欄に倚り月を帯びて魚の跳ぬるを聴く
坐来 句を得たるも 却って記するに慵く
涼風に付与して霧消するに任す

空榭:ひと気のないうてな。「榭」はうてな、あずまや。庭園などにある休息所。
畫橋:うつくしく塗りかざられた橋
坐來:ほどなくして
:覚えておく。もしくは書き留める
霧消:霧の消えるようになくなる

すばらしい宵にしずかに詠む

ひと気のないうてな、清らかな池、そこにかかる美しくいろどられた小さな橋
欄干によりかかり月光を浴びて耳を澄ますと魚が跳ねる音が聞こえる
ほどなくしてよい詩句を思いついたが、それを忘れず覚えておくのもかえって面倒で
涼風に託して霧のように消えてなくなるのに任せてしまった

補足

春風吟社9月提出の題詠です。自由度の高い詩題なので場面設定はいろいろと考えられるため、かえって迷いやすいのではないかと思います。この詩の場合、「良宵」の気分として結句がまず思い浮かんだので、それに収斂するように起承転を作りました。