訪成正寺拜中斎大鹽先生墓 其二【2017.03】(成正寺を訪ねて中斎大塩先生の墓を拝す 其の二)
訪成正寺拜中斎大鹽先生墓 其二
剩得墳前一樹梅
淸香髣髴出倫才
誰誹義擧輕成算
草莽瞻望崛起魁
2017年3月作
押韻
梅・才・魁:上平声十灰韻
訓読
成正寺(じょうしょうじ)を訪ねて中斎大塩先生の墓を拝す 其の二
剰し得たり 墳前一樹の梅
清香 髣髴たり 出倫の才
誰か誹(そし)らん 義挙 成算を軽んずと
草莽 瞻望す 崛起の魁(さきがけ)
注
成正寺と大塩平八郎の墓については「訪成正寺拜中斎大鹽先生墓 其一」を参照。
剩:あます。残す。
墳:土を盛り上げた墓。あるいは一般に墓。
髣髴:よく似ているさま。そっくり。
出倫才:ぬきんでて優れた才能。またそのような才能をもつ人物。
義擧:正義のために事を起こすこと。
草莽:「草莽之臣」の略で、在野・民間にありながら国への忠誠を抱く人、国政にたずさわる地位になくとも国を憂えて行動する民衆。
瞻望:あおぎ望んで慕う。
崛起:急にそびえ立つ。転じて一気に立ち上がる。幕末に吉田松陰らは、幕政や藩政にかかわる資格のない「草莽」(農民や町人、下級武士、脱藩浪士など)が従来の身分を超えて力を合わせて立ち上がり国家と社会を変革して列強の侵略から日本を守るべきだとする「草莽崛起論」をとなえ、これが尊王攘夷運動や倒幕運動へつながっていく。
訳
成正寺を訪ねて大塩平八郎先生の墓にお参りする その二
大塩先生の墓の前には梅の花が残っていて
その清らかな香りは、抜きんでた才能の持ち主であった先生を彷彿とさせる
正義のための挙兵について、いったい誰が、成算を軽んじていたなどと非難するだろうか
幕末になって身分を超えて立ち上がった民衆たちは、大塩先生を自分たちのさきがけとして仰ぎみたのだ
補足
3月25日(土)、大塩平八郎の墓がある成正寺を訪ねたことを詠んだ詩の二首目です。元与力の身でありながら、幕政の腐敗を糾弾して民衆を率いて立ち上がった大塩の存在は、幕末の志士たちの思想と行動に多大な影響を与えました。大塩平八郎の乱を維新のさきがけとする評価も広く知られており、それを詩に詠みこみました。
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